2010年03月04日

金メダルのプレッシャー

現地時間の先月28日に閉幕したバンクーバーオリンピック。前にも記事に書いたように私がTV観戦していて一番楽しかった競技はカーリングだが、あれだけニュースなどで取り上げられていたこの競技も、日本チームが敗退した後はほとんど話題に上らなかった。

幸いなことにNHK−BSでは女子の決勝をノーカットで、また女子の準決勝1試合と男子の決勝をダイジェストで放送してくれたのでTV観戦することができたが、女子の決勝は何ともドラマチックな試合だったので、私自身の備忘録も兼ねて記事にしておきたい。

決勝は、グループリーグを8勝1敗の首位で通過し、準決勝ではスイスとの息詰まる激闘を制した地元・カナダと、グループリーグを7勝2敗の2位で通過し、準決勝では中国に快勝したディフェンディングチャンピオンのスウェーデンの対戦となった。

前半はお互いにラインを読めずに苦戦していたが、とくにカナダにミスショットが目立ち、スウェーデンが主導権を握った。カナダは後攻の第1エンドをブランクで終えたものの、第2、第4、第6エンドはいずれも1点しか奪えず、逆に第3、第5エンドでは後攻のスウェーデンに2点ずつを許して3-4で第6エンドを終えた。

第7エンド、後攻のスウェーデンは一気に差を広げて連覇を大きく手繰り寄せたいところだったが、スキップ・ノルベリの最終投が痛恨のミスショットとなり、逆に2点をスティールされて4-5と逆転を許してしまった。

それでもまだ第8、第10エンドで後攻を取れるスウェーデンには十分に勝機があったが、第8エンドでスウェーデンはまたもミスを犯し、このエンドをブランクで終える。

続く第9エンド、スウェーデンとしてはできることなら2点以上を挙げて一気に逆転したいが、無理ならまたブランクにして第10エンドに勝負をかけてもいい。しかしここでもミスが出たスウェーデンは厳しい状況に追い込まれた。ノルベリは最終投で相手のストーン2つをテイクアウトしてなおかつ自分のストーンも外に出るという非常に難しいショットを果敢に狙ったが、相手のストーンをハウスの中にひとつ残してしまい、4-6と点差を広げられて第10エンドを迎えることになった。後攻を確保しているとはいえ、かなり苦しい状況だ。

そして運命の第10エンド。スウェーデンは3点を取っての大逆転勝ちを狙ったが、ノルベリの2投を残した段階でハウスの中にある自分たちのストーンはゼロ。絶体絶命の状況に追い込まれた。ここでノルベリはまず第1投をカナダのストーンの右斜め前にデリバーして、カナダのスキップ・バーナードにプレッシャーをかける。

それでもスウェーデンのストーンの前にはガードもなく、コースは空いている。正面からヒットすれば問題なくテイクアウトできる状況であり、オリンピックに出場するレベルのスキップならほぼ決められるショットだ。

しかし、地元での金メダル獲得という大きなプレッシャーに押しつぶされたバーナードのショットはわずかにそれ、スウェーデンのストーンの右斜め前に当たった。ちょうどカナダのストーンがバックガードになる角度であり、カナダはNo.1こそ確保したものの、No.2をスウェーデンに奪われてしまった。ノルベリは最終投をきっちりとカナダのNo.1ストーンにヒットさせ、自らのストーンはステイさせて2点を奪い、スウェーデンが土壇場で6-6の同点に追いついた。

決着はエキストラ・エンドへ。しかし後攻はカナダとなり、まだカナダが有利なことに変わりはない。そして迎えたバーナードのラストショット。ハウス内にはスウェーデンのストーンが2つ、斜めに並んでいたが、中央にあるNo.1ストーンをテイクアウトして自らはステイすればスウェーデンのNo.2ストーンよりも内側に入れるため、優勝が決まる。No.1ストーンへ向かうコースは途中の脇にガードストーンがあってやや狭いものの、針の穴を通すようなショットというほどではない。十分に決められるコースだ。

しかしバーナードのラストショットはわずかに右寄りへそれ、必死のスウィープにも関らず、スウェーデンのNo.2ストーンの方にヒット。弾かれたNo.2ストーンはNo.1ストーンをかすめたものの、これを大きく動かすには至らず、No.1ストーンはその場所に残った。スウェーデンのスティール成功、そして奇跡の大逆転金メダル!

相手のミスで転がり込んできた優勝とも言えるが、それはスウェーデンが最後まであきらめずにわずかな勝利の可能性を追求し続けたからこそ起こったミスで、やはりスウェーデンを褒め称えるべきだろう。最後の最後まで手に汗握るゲームを見せてくれた両チームに感謝したい。

また、女子の準決勝、カナダ対スイスも第10エンドにスイスのスキップ・オットとカナダのバーナードがしびれるようなスーパーショットの応酬を見せてくれて、こちらも楽しかった(ちょうどフィギュアスケートの女子フリーの時間帯と重なっていたので見た人は少ないと思うが)。

男子の決勝、カナダ対ノルウェーは、TV放送ではかなり端折られていたので展開がよく分からなかったが、女子のカーリングとは全く違う印象で、簡単に言えばテニスの男子と女子の違いに似ていた。パワーで圧倒する男子より、繊細なコントロールで勝負する女子の方が、戦術の占めるウェイトが大きいので見ている分には面白いかもしれない。

日本のメディアには、選手をアイドルのように持ち上げるばかりでなく、スポーツそのものの面白さをもっと伝えてほしいと思うが、それはスポーツを楽しむ文化が成熟していないこの国ではまだ難しいのだろう。いつかそんな時代が来ることを願いたい。


posted by ナカヲ at 23:51| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Other Sports Events | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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